51.結合双生児

4月に双子を出産しました。

生まれる寸前になってから双子と分かるケースもある中で、3ヶ月くらいの時に結合双生児であると診断してもらえ、

検査や病院選びに十分な時間が取れました。

「あきらめる」という選択肢があることは知っていましたが、生きていくのに必要な器官は揃っているのに、

生活に不自由することになりそうだからと殺す気にはなりませんでした。
結合の程度がひどければもっと考えたかもしれませんが、それは全くイメージできない、現実味のない方法に思えました。
また、それを勧める人が一人もいなかったことも幸いして、出産までなんのトラブルもなく過ごせました。


みんな、何かできることを、と考えた上で「何も言わない」ことにしてくれたようです。
もちろん、不安でいてもたってもいられなくなることもありましたが、妊娠中に起こりやすい
病気のことから費用のことまで、片っ端から調べてまわって不安を減らしていきました。

お腹の一部が結合していたため、出産はふたり一緒に取り出さなければならず、
しかも胎盤が母体のお腹側についていたこともあって、胎盤を避けるように子宮を半円に近い形で、通常よりかなり大きく切開されました。
出血は予想されていたよりは少なく、用意していた自己血を200ccくらい輸血しただけで済みました。


特大の傷が子宮についてしまったので(表面はお臍の下から恥骨のあたりまでばっさり)次の子は不可能ではないけれど、たいへんですよと言われています。
傷が大きかったせいか、痛みも体力の消耗も激しかったのですが、痛み止めをガンガン使って、できるだけ動くようにしてみました。
そしておそろしく良く眠りました。
それがよかったのか、単胎の帝王切開の人と同じくらいの入院日数で退院することができました。

分離手術は1ヶ月経ってから行われ、無事に分離されました。
その後、開腹のために小腸が癒着したのか、一人が腸閉塞になって1週間ほど入院しましたが、手術をすることなく治ってしまいました。
東京に住んでいる場合は、健康保険の対象となる医療費は区が負担してくれるので、分離手術や入院の費用など、ほとんど支払いはありませんでした。
でも、高額療養費の請求をすれば、かなりの額が戻ってくるようなので、もし医療費が自己負担だったとしてもなんとかやっていけそうでしたが。
何の心配もないというわけではないのですが、子供たちは健やかにすくすく育っています。

今回の妊娠は、本当に運が良かったと思います。
東京に住んでいたことや良い先生にめぐり合い、早めに診断してもらえたこと、
設備の整った病院に紹介してもらえたこと、私たちの考えを尊重してくれる親類ばかりだったことなど、

本当に幸運な巡りあわせがあったので、私たちは今、穏やかに過ごせています。

結合双胎は、一卵性双生児が発生するのと同様、ある一定の確率で起こる現象です。
調べてみると日本だけでも、生まれなかったケースも含めると23年に一度くらい
実際に分離手術まで至ったのは510年に一度くらいの割合で結合双生児は発生しているような印象を受けました。

(数字は、あくまで「印象」です)
それなら、こんなに受け入れ態勢の万全な私たちのところに現れて、良かったと思っています。